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2009年12月06日

今更ながら事業仕分けについて(個別項目編)

全体としては事業仕分けには賛成ですが、個別項目に関しては色々と論じたい事があります。
申し訳ありませんが、長文(100行弱)です。


まずは、これはもっともだなと思った批判から。

・コンテンツ・ファッション産業に対する政府の支援が国際競争力強化になるとは思えない

確かに納得です。
国が支援しなければ生き残れない文化に国が産業として金を出すべきなのかという話です。
文化は経済的価値だけでは計れないとは言いますが、
経済的価値より高い価値が有るのならば、国の支援が無くても当然受け継がれていくものでしょう。
伝統芸能でも国の支援無しでビジネスとして成り立っているものが多い事を考えるべきです。
逆に制作者・会社に対する低利貸付という形を採るならば、受け取る側も採算性を無視出来ないので有る程度まで賛成です。
しかし、なんで担当職員が95人も必要なんでしょうか?
しかも、支援事業の総額14億の予算の内3億円近くが官庁側の職員の人件費というのも不思議です。

・食育の支援者の時給5600円は高すぎるのでは?

極めて稀なスキルを持った技術者なら分かりますが、支援者、しかも何の支援をしているか資料上から
分からない人に時給5600円を予算計上するとはどういうつもりでしょうか。
食育推進は必要だとはいえ、HPでの情報提供で、食品産業へのお墨付きを
与えるだけで十分だと思うのですが

・市販車に使えない技術のF1マシンを作ってもしょうがないのと一緒

スパコンの予算への意見です。
スパコンは国産といいますが、国内メーカーでも外国製の半導体・設計技術をふんだんに搭載しています。
ちょっと耳に挟んだところでは、国の予算が付いてもメーカーとしては採算が取れないそうです。
新型スパコンの開発について国内の半導体メ―カーは独自開発からほぼ撤退しています。
なぜ、民間企業は撤退したのかをよく考えるべきです。
こういう応用研究に近い物に国の予算を使う場合には産業応用可能性の説明が必須でしょう。
スパコンを世界記録用のチューニングから汎用的に使えるように組み直すのに、
かなりのコストがかかるはずです。
しかも性能が落ちるとか。
PC業界は、もう市場として成熟に向かっています。
ある時期の自動車業界と同じように速さの勝負から全体的な快適さの勝負に市場が移行している時に、
スパコンの速度競争に国の予算を使う意義については良く議論すべきです。
市販のPCの並列化でスパコンと同じ性能は出せるのですから。

次に異論が有る分野について

まず、spring-8の予算削減については疑問ですね。
この施設は日本でノーベル賞学者を多数輩出している素粒子科学の根幹にも位置する施設です。
コストに見合うだけの使用料に上げるとかいう議論も有りましたが、
spring-8を使うところは、国とか大学とかの研究所が多いはずです。
spring-8を独立採算性にしてもそちらの予算が増えるだけなので、
国家全体としてどうなのかという観点から考えなければいけないと思います。
spring-8に匹敵する物は民間では作れないはずで、独立採算性にしたらむしろ弊害も大きいです。

それから、HTVの予算削減はきついのではと思います。
確かにこういう先端技術の予算の見積もりは甘くなりがちです。
しかし、それは先端開発である為にどこに予算がかかるか予想不可能なので
余裕を持って見積もっているからでしょう。
コスト削減の努力は勿論必要ですけれども、
HTVの運用は国際公約ですし、GXロケットの凍結分を振り分けても良かったのではないかと。
こういう分野については支出チェックを厳しくする事で無駄な予算を省くべきだと思うのですが。

ライフサイエンス分野については仕分け人の不勉強が有ると思います。
タンパク質の構造を知ってどうなるのとかいう指摘が結構有りましたが、
タンパク質を解明する事は医療・製薬分野に広く貢献する事業です。
成果が見えないという意見が多かったですが、それは説明者の説明が良くなかったからの様な気がします。
もう一つ、成果が出ないと見える理由としては研究が重要でないからではなく、
産学連携が不十分だからだと予想されます。
そちら側を指摘する意見がなかったのが残念です。

科学技術分野の中での指摘として、
予算が下りる教授ルートが固定化していないか?
というものがありました。
確かに、それが交流を阻害する程でない限りで学問の世界にも有る程度の競争が必要です。
でも、本当に努力する人が研究しているのなら、一本化した方が良い訳で。
これは難しい問題です。
実際に研究をしている現場に直接研究費が払われるべきなのは勿論でしょう。

他に科学技術・教育関係の問題として、大学院の過剰の問題が有ります。
特に過剰なポスドク(大学院博士課程卒業者)の雇用の受け皿として
予算を割り当てるのはどうなのかという意見が散見されました。
急激に大学院生を増員した時点でこの事態は想定出来たはずで、
旧政権の失策の一つと言えるかも知れません。
これも判断が難しい問題でしょう。

それでも、重要な事業についての結論が1~2割の削減に収まっているのは評価すべきでしょう。
全体として、科学技術分野に関してもコスト削減努力が求められているという訳です。

これまでも示してきたかと思いますが、国家事業全体としてコスト削減の基準を改めて示すべきでしょう。
例えば
研修・研究関連施設は、東京23区内(地価の高い場所)の新設は禁止
競争入札に出来ない場合は経緯説明を求める
等です。
事業上(例えば精度等)の問題でコストが高くなる場合の説明は
これからは必須になるのではないでしょうか?

この事に関しては民間からコスト削減のアイディアを公募するのも手でしょう。
民間企業は、本当に細かいところまで経費を削っていますからね。

事業仕分けの精神がしっかり予算に反映されるのはこれからです。
しっかりとした国家予算改革を期待します。

国の幸福な未来を創る人達にきちんと予算が届くように。

投稿者 桜川 : 2009年12月06日 23:06

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